ライフサイエンス実験の熟練者の暗黙知をAIで伝える「BioSkillDX」プロジェクトに参画:2025-10-15
- PtBio Inc.
- 13 分前
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プラチナバイオ株式会社は、科学技術振興機構(JST)の経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)の研究開発課題「ノウハウの効果的な伝承につながる人作業伝達等の研究デジタル基盤技術」*1において、この度、国立大学法人東京大学を代表機関とする研究開発プロジェクト『BioSkillDX:ライフサイエンス実験作業の暗黙知獲得と作業支援』に共同研究機関として参画することをお知らせします。本プロジェクトは、代表機関・国立大学法人 東京大学のほか、国立研究開発法人 産業技術総合研究所、国立大学法人 東京科学大学、千葉大学、長岡技術科学大学、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所、沖縄科学技術大学院大学、オムロンサイニックエックス株式会社、株式会社日立製作所、プラチナバイオ株式会社による研究グループにより実施します。

本プロジェクトでは、ライフサイエンス分野の実験現場で求められる高度な技能やノウハウ、コツなどの暗黙知をAIで可視化・データ化し、誰もが高精度な実験を再現できる新たな作業支援基盤の開発に取り組みます。具体的には、バイオ実験作業データを蓄積するとともに、熟練者の経験や勘に基づくノウハウ・コツなどの暗黙知をAIが解析・抽出することで、非熟練者でも迷わず実験を進められる個別最適なフィードバックや実験プロトコル*2を提示できる仕組みの実現をめざします。これらの実現により、実験の再現性向上や人材育成の効率化、研究開発のスピードアップに貢献します。
*2 実験プロトコル: 科学実験や研究において、実験の目的、使用する試薬や器具、手順、条件などを詳細かつ具体的に記述した手順書
プラチナバイオが担う研究開発領域
ライフサイエンス分野の研究開発では、複雑な実験を高精度に行う熟練技術者の技能が成果の再現性や品質を大きく左右しています。しかし、実験プロトコルに書かれていない「ノウハウ」や「コツ」といった暗黙知が重要である一方、少子高齢化による熟練技術者の減少や技能伝承の属人化が進んでいます。特に、定年退職や業務転換により現場を離れる実験技術の先駆者・第一人者が持つ貴重な知見が失われるリスクが高まっており、次世代へ確実に技術を継承できる環境づくりが強く求められています。
プラチナバイオは、このような課題の解決に向けて、プロジェクトにおいて、研究開発小項目I-2-c「実験技術の先駆者および第一人者の暗黙知抽出・アーカイブシステムの構築」を担当します(研究開発責任者:事業推進部ディレクター 小野 浩雅)。本取り組みでは、他機関との研究チームを構成し、分野に定着した高度かつ実践的なプロトコル(熟練段階)に内在する暗黙知が、実験技術の先駆者およびその分野の第一人者から、将来的に失われる前に記録・継承するシステムの開発に取り組みます。これにより、分野を牽引してきた熟練技術者の知見を体系的に保存し、組織や産業全体で共有・活用できる基盤を構築することで、研究開発のスピードとイノベーション創出力の向上をめざします。
1. Webセミナー・インタビュー形式による効率的な暗黙知抽出
実験技術の先駆者・第一人者は、単なる操作手順だけでなく、プロトコルの開発目的、選択判断、過去の試行錯誤、制約への対応といった文脈的かつ高度な暗黙知を内包しています。研究チームでは、Webセミナー・インタビュー形式を活用することで、先駆者・第一人者に自身のプロトコル開発過程や工夫の背景を紹介してもらい、質疑応答を通じて形式知として記録可能なQAデータを効率的に抽出・蓄積します。この手法により、従来は口頭伝承に依存していた貴重な知識を、組織や時間の制約を超えて広く記録・共有することが可能になります。
2. 暗黙知抽出ガイドラインの策定とシステム構築
暗黙知を効果的に引き出すためには、体系的なアプローチが不可欠です。研究チームでは、暗黙知抽出のためのガイドラインを策定し、深い知見の抽出にはどのような質問や対話が有効かを明確化します。また、Webセミナーでの対話内容を自動的に記録・構造化し、AIが解析可能な形式で保存するシステムを構築します。これにより、プロトコルに明示されていない「なぜその判断をしたのか」「どのような工夫が隠れているのか」といった深層的な知識を、再利用可能な形式知として蓄積することが可能になります。
3. 大規模な暗黙知収集とレポジトリへの統合
構築されたシステムを活用して、大規模な暗黙知データの収集を推進します。複数の先駆者・第一人者からの知見を集約し、BioSkillDXプロジェクト全体のデータレポジトリと統合することで、ラボや組織の枠を超えて広く共有・活用できる共通基盤を実現します。これにより、プロトコルの共通記述化、次世代への技術継承、AI支援ツール構築の基盤として、人材育成の効率化、実験の再現性向上、そして新技術の迅速な社会実装に貢献します。
今後の展望
プラチナバイオは、本プロジェクトを通じて、ライフサイエンス分野における技術伝承のデジタルトランスフォーメーション(BioSkillDX)の実現に貢献します。この取り組みに関心をお持ちの方、あるいは共感いただける方がいらっしゃいましたらぜひお問い合わせください。