
Genome Editing
Platinum TALEN
TALEN(Transcription Activator-Like Effector Nuclease)とは、植物病原細菌がもつ転写因子様エフェクタータンパク質(TALE)に、制限酵素の一種であるFokIのヌクレアーゼドメインを融合させたものです。
DNA結合ドメインであるTALEには、34アミノ酸からなるモジュールが連なったDNA結合リピートが含まれており、一つのモジュールがDNAの一塩基を認識できるようになっています。各モジュールの12番目と13番目のアミノ酸はRVD(Repeat Variable Diresidues)と呼ばれ、RVDのアミノ酸組成を変化させることで、認識できるDNAの塩基が変化します。この性質を利用して、適切なRVDを有するDNA結合リピートを組み上げることで、標的とするDNA配列に特異的に結合するTALEを作製できます。

周期的リピートによる優れたDNA結合性(特異性)
従来のTALENでは、各モジュールに含まれるRVD以外のアミノ酸配列を固定して利用するのが一般的でした。Platinum TALENは、自然界のTALEタンパク質においてモジュールの4番目と32番目のアミノ酸にも多様性があることに着目し、これらの位置のアミノ酸に周期的な多様性をもたらすことで、従来のTALENよりも高いDNA結合特性を実現したシステムです*1。
これまでにヒトiPS細胞を含む培養細胞や、線虫、ミジンコ、ウニ、ホヤ、ゼブラフィッシュ、イモリ、カエル、マウス、ラット、マーモセットなどありとあらゆる細胞および生物種において、非常に高い切断活性を有することが確認されています*2,3。










Platinum Gate systemによる製造の簡便化・効率化
TALENは、CRISPRに比べて製造ハードルが高く、誰もが使いこなせるツールではないと一般的に言われています。
プラチナバイオでは、Platinum TALENを効率的に構築できるシステムPlatinum Gate systemを独自に確立しました*1。
更に、あらゆる標的配列に対応するPlatinum TALENのライブラリーも構築し、産業応用時にPlatinum TALENを効率良く提供できる体制を整えています。

*1 Sakuma T et al., Sci Rep, 3, 3379 (2013).
*2 Sakuma T & Woltjen K, Dev Growth Differ, 56, 2-13 (2014).
*3 Sakuma T & Yamamoto T, Methods Mol Biol, 1630, 25-36 (2017).
FirmCut Nuclease Domain(ND1)
従来のFokIとは異なる種に由来する新規DNA切断ドメインとして同定した、Firmicutes由来のヌクレアーゼドメインです。

優れた切断活性・精製時の利便性
標的配列への切断活性が高いことや、組換えタンパク質の収量が飛躍的に向上すること等、従来のFokIと比べて様々な優位性を有しています。

オフターゲットリスクの低減
標的配列を切断する際、制限酵素に二量体を形成(ヘテロダイマー化)させ、特定の二量体の組み合わせのみ活性化させることで、”2段階認証”での配列切断が可能となります。これにより、オフターゲットリスクを低減できます。
ND1では、従来のFokⅠと異なり、標的配列への特異性を高めたヘテロダイマー変異体においても切断活性が減弱しないことが示されており、医療分野を中心に産業での応用が期待されます。


遺伝子導入システム PITCh system
ゲノム編集はDNAの修復機構を利用して行われ、その修復機構には主にHR、NHEJ、MMEJの3つがあります。
染色体上の狙った領域に目的の遺伝子を導入(ノックイン)する場合、相同組換え(HR)の修復機構を利用するのが一般的でしたが、HR能の乏しい生物においては、遺伝子導入が困難という課題がありました。

遺伝子導入困難な生物種の遺伝子編集も可能に
プラチナバイオのCTO山本卓・科学技術顧問 佐久間哲史らは、導入遺伝子の両端に結合させる塩基配列を短くして遺伝子を導入するためのTALENベクターを簡単に作れる方法を確立しました*1,2,3。
これまで遺伝子導入困難であった生物に対して適用した例も散見され、遺伝子破壊と同時に遺伝子を導入できることが複数示されています。

Transgenesis or Knock-in/knock-out
*1. Nakade S et al., Nat. Commun. 5, 5560 (2014).
*2. Sakuma T et al., Nat. Protoc., 11, 118-133 (2016).
*3. Kazuki N et al., Bioeng. 8(3), 302-308-(2017).